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歯磨きは1日何回が正解?最新研究から見えた「理想の回数」と「矯正中のリスク管理」

こんにちは。自由が丘シーズ歯科・矯正歯科です。

先日、車でラジオを聴いていると歯科医師が「しっかり歯磨きできれば歯磨きの回数は1日1回で十分である。」と言っていて果たして本当だろうかと思い、本日は1日に歯磨きを何回するのが正解かについて考えてみました。

 

そのラジオでは1日に1回の歯磨きで十分とされる理由は、歯に付着するプラークと呼ばれる細菌の層ができあがるまで約1日かかるためと述べていました。そこで歯磨きの回数は1日で1回で良いとされる文献を調べてみましたが、特に見当たりませんでした。逆に1回では不十分と考えられる文献はいくつかありました。

 

<プラークが「成熟」するまでの時間>

  • 初期の付着 :  歯を磨いた直後から、数分で「ペリクル」という膜ができ、数時間で細菌が付着し始めます。
  • 成熟(24時間〜48時間) :  付着した細菌が複雑に絡み合い、バリア(バイオフィルム)を形成して除去しにくくなるのが約24時間後です。
  • 石灰化(48時間以降) :  放置されたプラークは、約48時間から数日で「歯石」へと変化し始め、こうなると歯磨きでは落とせません。

ポイント :  「24時間で固まるから、その直前に1回落とせばいい」という考えは理論上の最短ラインであり、実際には磨き残しが必ず発生するため、1日1回ではリスクが高すぎます。

<なぜ「1日1回」では不十分なのか(論文の視点)>

① 磨き残しのリスク

どんなに丁寧に磨く人でも、1回のブラッシングで落とせるプラークは約60%程度と言われています。

② 糖分の摂取頻度との関係

前回のブログでも書きましたが歯磨きの目的はプラーク除去だけでなく、「お口の中を酸性から中性に戻すこと」にもあります。

  • ステファン・カーブの法則: 食事のたびにお口の中は酸性になり、歯が溶け始めます(脱灰)。
  • 論文の知見: 飲食回数が多いほど再石灰化の時間が不足し、むし歯リスクが跳ね上がることが示されています。1日1回の歯磨きでは、日中の酸性状態をリセットできません。

 

<矯正治療中の方には特に「1日1回」は危険>

  • 装置周辺の細菌増殖 :  矯正装置(ブラケットなど)があると、24時間待たずとも数時間で驚異的な量のプラークが蓄積します。
  • 論文的背景 :  矯正患者の口腔内細菌叢の変化に関する研究では、装置装着後に特定の虫歯菌(S. mutans)が急増することが報告されています。
  • 結論 :  1日1回では、装置の影に隠れた細菌がすぐに酸を出し、装置を外した時に「ホワイトスポット(初期むし歯)」ができてしまう可能性が非常に高いです。

 

それでは理想的な1日の歯磨きに回数は

1. 【結論】理想は「1日3回」。最低でも「1日2回」が必要な理由

 忙しい毎日の中で、なんとなく済ませている歯磨き。実は、回数ひとつで将来の健康リスクが大きく変わることが分かってきました。歯垢(プラーク)が成熟して悪影響を及ぼす前にリセットする必要がある。また、食事の度に酸性に傾く口腔内のpHを中性化する必要があります。そのため「朝・夜」の2回は必須。特に唾液が減少する「寝る前」が最も重要です。

 

2. 最新研究が証明:歯磨き回数と「心臓の健康」の意外な関係

2019年の大規模研究(Changら)によると約16万人のデータを解析した結果、1日3回以上歯を磨く人は、心房細動のリスクが10%、心不全のリスクが12%低下したと報告されています。歯磨きは虫歯や歯周病の予防だけでなく「全身のアンチエイジング」という効果も期待できます。

 

3. 仕事のパフォーマンスにも影響?「噛むこと」と「脳」の繋がり

Piancinoらによると咀嚼(噛むこと)が脳の海馬の神経生成を刺激し、記憶力や認知機能を維持・向上させることが示されています。つまり、 正しく噛める歯を維持することは、記憶力や集中力の維持に直結する。仕事や勉強のパフォーマンスを上げるには、しっかり噛める歯を維持するためのケアが重要となる可能性があります。

 

4. ワイヤーの矯正治療を検討中・治療中の方へ

ワイヤーの矯正装置周辺はどうしても汚れが溜まりやすいと言われているため、矯正中は「毎食後(1日3〜4回)」がスタンダードになります。歯並びを綺麗にしても、歯の健康の両立が重要です。

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左:ワイヤー矯正中でも可能なフロス

中:3列の歯ブラシ

右:タフトブラシ

通常よりも細めの歯ブラシが装置周囲は磨きやすい。歯間ブラシで装置周囲を磨くのも有効。歯磨きの後のフッ素入り洗口剤などもおすすめ。

 

参考文献:

  • Chang Y, et al. Improved oral hygiene care is associated with decreased risk of occurrence of atrial fibrillation and heart failure. Eur J Prev Cardiol. 2019.
  • Piancino MG. Experts’ narrative review “Mastication, Hippocampal Structure Changes and Cognition”. Arch Oral Biol. 2026.
  • 坂田利家 他「咀嚼と脳・全身の健康」に関する一連の臨床研究

 

監修者

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自由が丘シーズ歯科・矯正歯科 理事長 山口雅章

2005年昭和医科大学歯学部卒業、研修医終了後に昭和医科大学歯科矯正学教室勤務。2011年自由が丘シーズ歯科・矯正歯科開設。

所属:日本矯正歯科学会、東京矯正歯科学会、成人矯正歯科学会、日本舌側矯正歯科学会、日本包括的矯正歯科学会、日本顎関節学会、日本デジタル歯科学会、日本3Dプリンティング矯正歯科学会