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Th17細胞を味方にする咀嚼

こんにちは。

自由が丘シーズ歯科・矯正歯科です。

本日はTh17細胞について調べてみました。

 

Th17細胞は免疫システムにおいて「最前線の防衛隊」のような役割を果たすリンパ球(ヘルパーT細胞)の一種で粘膜のバリア機能を維持するために欠かせない存在です。

Th17細胞は、主にインターロイキン-17 (IL-17) という物質を放出し、以下のような働きをします。

細菌・カビからの防御: 皮膚や口腔、腸管などの「外界と接する場所」で、細菌や真菌(カビ)の侵入を防ぎます。

好中球の招集: 炎症を引き起こして「好中球」という強力な食細胞を呼び寄せ、侵入者を一気に退治させます。

バリアの強化: 粘膜の細胞を刺激して、バリアを強固にする物質の産生を促します。

Th17細胞は非常に強力なため、バランスが崩れて「暴走」すると、自分自身の体を攻撃してしまうことがあります。

自己免疫疾患: 関節リウマチ、乾癬(かんせん)、多発性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)などの発症や悪化に関与していることが知られています。

腸内細菌との関連: 特定の腸内細菌(セグメント細菌など)がTh17細胞を過剰に増やしてしまうことがあり、これが全身の炎症につながるという研究も進んでいます。

歯周病と全身疾患の関連が多く研究されていますが、Th17細胞も関連がありそうです。

歯周病菌(P.g.菌など)が歯ぐきで増殖すると、防御反応としてTh17細胞が活性化し、炎症性物質(サイトカイン)を大量に放出します。

血管への侵入: 歯ぐきは血管が豊富です。炎症によって壊れた組織から、歯周病菌やTh17細胞が放出した炎症性物質(IL-17やTNF-αなど)が血液に乗って全身を駆け巡ります。

慢性的な炎症: これが「微小な火事」が全身で起きているような状態(慢性炎症)を作り出し、各臓器にダメージを与えます。

<糖尿病と歯周病の関連>

この二つは**「双方向性」**の関係にあり、お互いを悪化させることが論文でも証明されています。

① 歯周病 → 糖尿病を悪化させる

血液中に入り込んだ炎症性物質(TNF-αなど)は、筋肉や脂肪細胞においてインスリンの効きを悪くさせます。その結果、血糖値が下がりにくくなり、糖尿病が悪化します。

② 糖尿病 → 歯周病を悪化させる

高血糖状態が続くと、体内の組織が「糖化(AGEsの蓄積)」し、免疫バランスが崩れます。これによりTh17細胞による炎症が暴走しやすくなり、歯ぐきの組織破壊が加速して、歯周病が重症化します。

興味深いデータ: 歯周病の治療(歯のクリーニングやスケーリングなど)を行うと、糖尿病の指標であるHbA1c(ヘモグロビンA1c)が約0.4〜0.7%改善するという研究結果が多く報告されています。これは、糖尿病薬を1種類追加するのと同程度の効果に匹敵することもあります。

<その他の全身疾患との関連>

Th17細胞が媒介する炎症は、心臓や脳にも影響を及ぼします。

動脈硬化・心疾患: 血液中の炎症物質が血管内壁を傷つけ、プラーク(コブ)を作りやすくします。これが心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。

関節リウマチ: 歯周病菌が持つ特定の酵素が、リウマチの原因となる物質の生成に関与していることが分かっており、Th17細胞の暴走を促して関節の破壊を進行させます。

アルツハイマー型認知症: 脳内に歯周病菌の成分や炎症物質が到達し、アミロイドβの蓄積を促進させる可能性が指摘されています。

それではTh17細胞を味方にするにはどうしたらよいのか?

Th17細胞は、「適度な刺激(咀嚼)」「良好な腸内環境」があるときに、最も効果的にバリアとして機能します。

しっかり噛む: 口腔内のTh17細胞を適度に刺激し、口からの感染を防ぐ。咀嚼がここでも重要なことが示唆されました。

腸内フローラを整える: 腸内でのTh17細胞の暴走(過剰な炎症)を抑え、全身の健康を保つ。

物理的刺激がスイッチ: 歯ぐき(歯周組織)において、咀嚼による物理的な力が加わると、それに応答してTh17細胞が増殖・活性化します。

口腔バリアの維持: 噛むことでTh17細胞が元気になり、口の中の感染症(歯周病菌など)を防ぎます。

全身への波及: 口腔内で適切に活性化した免疫バランスは、飲み込まれる唾液や細菌を通じて、腸管の免疫系にも好影響を及ぼすと考えられています。

参考文献:Mastication-induced Th17 cells at the oral barrier. Dutzan N, et al. (2017, Immunity)

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