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歯根吸収について
こんにちは。
自由が丘シーズ歯科・矯正歯科です。
本日は歯の根が短くなってしまう歯根吸収について考えてみました。
歯根吸収の原因
① 歯の矯正治療による機械的刺激
内容: 矯正治療に伴う強い力や持続的な圧迫。
メカニズム: 歯根膜の毛細血管が圧迫されて微小な壊死(透明化)が起こり、それを修復しようとする細胞(破歯細胞)が歯根を溶かしてしまう。
論文の知見: 成人の方が若年層より重症化しやすい傾向や、遺伝的な感受性(個体差)が関与していることが指摘されています。
② 歯の打撲・外傷
内容: 転倒や衝突による歯の脱臼、亜脱臼。
メカニズム: 歯をぶつけた衝撃によって歯根膜やセメント質が損傷し、防御バリアが失われることで吸収が始まります。
リスク: 外傷後に「置換吸収(アンキローシス)」といって、歯根が骨に置き換わってしまうケースも報告されています。
③ 根管内の感染・炎症(内部吸収)
内容: 重度の虫歯や外傷により、神経(歯髄)が慢性的な炎症を起こすこと。
メカニズム: 炎症によって活性化した細胞が、歯の内側(根管壁)から象牙質を溶かします。
④ 隣接歯や腫瘍による圧迫
内容: 親知らず(智歯)が手前の歯の根を押し下げたり、嚢胞(うみ袋)や腫瘍が拡大したりすること。
メカニズム: 持続的な圧力が歯根面に加わることで、局所的に吸収が誘発されます。
⑤歯のホワイトニング剤などの化学的刺激
内容: 高濃度の過酸化水素を用いたホワイトニング(特に歯の神経が死んだ失活歯に行うウォーキングブリーチ)。
リスク: 薬剤が象牙細管を通って歯頸部に漏れ出し、炎症を引き起こして「頸部外部吸収」を誘発する可能性が論文で示唆されています。
特に歯の矯正治療を行う場合には、避けられないリスクになるので歯根吸収に留意して治療を行わなければなりません。
多くの論文では、軽度の吸収(2mm程度)であれば、歯の寿命や機能には影響しないとされていますので多くの場合には心配は入りませんが、体質によって元々短い場合や歯の形態、遺伝などによって歯根吸収が起こりやすいことが明らかになっています。
既往歴の確認: 過去に歯に強い衝撃(外傷)を受けたことがある歯は、矯正力に対して過敏に反応し、吸収が進みやすいことが報告されています。
歯根の形態チェック: レントゲンやCTで、歯根の先がもともと尖っている(Pipette-shaped)や、極端に短い(Blunted)場合、通常よりも吸収リスクが高くなります。
遺伝的要因: 家族に矯正で歯が短くなった人がいる場合、遺伝的な感受性(IL-1B遺伝子多型など)が関与している可能性があります。
矯正治療で気をつけることは適切な力で動かすことや、定期的にレントゲンやCTで歯根を確認する、歯根吸収を起こした場合には3ヶ月程度動かすのをやめてセメント質の修復を待つ、これ以上動かすのは危険な場合には治療方針を変更するなどが考えられます。
それでは具体的にはどのくらい歯根が短いとリスクがあるのか考えます。明確に述べている論文は少ないのですがリスクの目安は以下になります。
歯根の絶対的長さ:9〜10mm以下
一般的な上顎中切歯の平均的な歯根長は約12〜13mmです。これが10mmを切っている場合、あるいは治療中に9mm以下にまで吸収が進んだ場合、歯の支持組織(歯槽骨)との兼ね合いで、将来的な脱落リスクが急激に高まると警鐘を鳴らす論文が多いです。
歯冠対歯根比(C/R比):1 : 1 以下
最も引用される指標です。通常、理想的な比率は 1 : 1.5〜2 です。
歯冠の長さに対して歯根の長さが 1 : 1 を下回る(歯根の方が短くなる)と、テコの原理で歯周組織への負担が増し、矯正治療の継続が危険視されます。
また歯根の長さ以外にも留意した方が良いことがあります。
歯根の形態:尖っている(Pipette-shaped)や、先端が細い歯根は、10mm以上あっても吸収しやすい。
歯槽骨の高さ:歯周病などで骨が下がっている場合、歯根が12mmあっても、実質的な支持部分は数ミリしかなく、リスクは極めて高い。
移動の種類「圧下(押し込む)」や「大きなトルク(根の向きを変える)」は、長さに関わらず吸収を加速させる。
監修者
自由が丘シーズ歯科・矯正歯科 理事長 山口雅章
2005年昭和医科大学歯学部卒業、研修医終了後に昭和医科大学歯科矯正学教室勤務。2011年自由が丘シーズ歯科・矯正歯科開設。
所属:日本矯正歯科学会、東京矯正歯科学会、成人矯正歯科学会、日本舌側矯正歯科学会、日本包括的矯正歯科学会、日本顎関節学会、日本デジタル歯科学会、日本3Dプリンティング矯正歯科学会
