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咀嚼が全身に及ぼす影響
こんにちは。
自由が丘シーズ歯科・矯正歯科です。
咀嚼が全身に及ぼす影響、メリットに関して考えてみました。
近年、「咀嚼」が単なる消化の第一歩ではなく、脳、ホルモン、筋肉、そして全身の代謝を司るコントロールスイッチであることを解明されてきました。
大分大学の坂田利家名誉教授の研究を起点に、現代ではさらに広い範囲(心血管、筋肉、自律神経)への影響が明らかになっています。
1. 脳機能と認知症リスクへの影響
咀嚼が脳の血流を増やし、認知機能を保護することを示す研究です。
- 論文名: Chewing maintains hippocampus-dependent cognitive function.
- 著者: Onozuka M, et al. (2000年代以降のシリーズ研究)
- 概要: 咀嚼によって脳内の海馬(記憶を司る部位)の神経活性が維持されることを、MRIや行動実験で証明しました。
- 全身への影響: 「噛めない」ことが脳の老化を加速させ、認知症のリスクを大幅に高めるという疫学的根拠となりました。
2. 代謝とエネルギー消費(食事誘発性熱産生:DIT)
咀嚼が消費カロリーそのものを増やすという、ダイエットに直結する知見です。
- 論文名: The effects of post-prandial gum chewing on diet-induced thermogenesis.
- 著者: Hamada Y, et al. (2016, 東京工業大学の研究チーム)
- 概要: よく噛んで食べること、および食後にガムを噛むことが、食事誘発性熱産生 (DIT) を有意に増加させることを示しました。
- 全身への影響: 消化管の血流が改善され、内臓の活動が活発になることで、座っている状態でも全身の代謝が上がります。
3. 血糖値のコントロールと糖尿病予防
咀嚼が膵臓の負担を減らし、血糖値の急上昇を抑えるメカニズムです。
- 論文名: Impact of chewing on postprandial glycemia and insulin secretion in healthy humans.
- 著者: Suzuki H, et al. (2005)
- 概要: 咀嚼回数を増やすことで、食後の血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの節約につながることを報告しました。
- 全身への影響: 血管へのダメージ(血糖スパイク)を防ぐため、動脈硬化や糖尿病の予防に寄与します。
4. 骨格筋と身体能力の維持
「噛む力」が全身の筋力や寿命と相関しているという視点です。
- 論文名: Masticatory function and its association with physical performance and muscle mass in older adults.
- 概要: 高齢者を対象とした調査で、咀嚼能力が高い人ほど、歩行速度が速く、握力が強く、骨格筋量が維持されていることが示されています(サルコペニア予防)。
- 全身への影響: 顎の筋肉を使う刺激が、三叉神経を介して全身の運動機能の維持にプラスの影響を与えます。
<咀嚼が全身に波及するメカニズムのまとめ>
脳・神経: メカニズムは海馬への血流増、ヒスタミン分泌、メリットは記憶力向上、食欲抑制、認知症予防
心血管系: メカニズムは自律神経(交感神経)の適度な活性化、メリットは血圧の安定、冷え性の改善
消化器・代謝: メカニズムは唾液分泌、DIT(熱産生)向上、メリットは消化促進、血糖値安定、脂肪燃焼
筋肉・骨: メカニズムは三叉神経への刺激、栄養吸収効率の向上、メリットは全身の筋力維持、フレイル(虚弱)予防
これに加え、最近流行りの腸活にも咀嚼が重要な役割があることがわかってきました。
咀嚼による口腔内の免疫細胞(Th17)への影響
腸内環境とも密接に関わる「免疫」の視点からの論文です。
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論文名: Mastication-induced Th17 cells at the oral barrier.
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著者: Dutzan N, et al. (2017, Immunity)
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内容: 咀嚼による物理的な刺激が、歯ぐきにあるTh17細胞(感染を防ぐ免疫細胞)を活性化させることを発見しました。
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腸への関連: 口腔内での適切な免疫応答は、有害な細菌が腸へ流入するのを防ぐ最初のバリアとなります。咀嚼が減るとこのバリアが弱まり、腸内細菌叢のバランスを崩す一因となります。
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物理的刺激がスイッチ: 歯ぐき(歯周組織)において、咀嚼による物理的な力が加わると、それに応答してTh17細胞が増殖・活性化します。
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口腔バリアの維持: 噛むことでTh17細胞が元気になり、口の中の感染症(歯周病菌など)を防ぎます。
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全身への波及: 口腔内で適切に活性化した免疫バランスは、飲み込まれる唾液や細菌を通じて、腸管の免疫系にも好影響を及ぼすと考えられています。
咀嚼という機能がここまで全身にメリットがあるという事にびっくりしますね。簡単に言えばよく噛む事でダイエットになり、ボケ防止になり、高血圧や糖尿病、動脈硬化の予防になり、腸の働きも助け、若々しい体でいられる一石5鳥くらいあるということです。
それでは咀嚼の重要性がわかったところで次回のブログでは実際にどのように食事をしていけば良いかを考えてみたいと思います。坂田教授によれば1口30回噛むことがお勧めとのことです。
監修者
自由が丘シーズ歯科・矯正歯科 理事長 山口雅章
2005年昭和医科大学歯学部卒業、研修医終了後に昭和大学歯科矯正学教室勤務。2011年自由が丘シーズ歯科・矯正歯科開設。
所属:日本矯正歯科学会、東京矯正歯科学会、成人矯正歯科学会、日本舌側矯正歯科学会、日本包括的矯正歯科学会、日本顎関節学会、日本デジタル歯科学会、日本3Dプリンティング矯正歯科学会
